

想いを包み込む
温もりという安心感と
哀愁との融合
江頭誠さんの作品には、ただ「見る」だけでは感じられない、深い感覚が宿っている。花柄の毛布を使ったアートは、まさにその象徴だ。あの毛布が持つ、何とも言えない温もりや懐かしさ、そして心の奥底に響く郷愁。江頭さんの手によって、その感覚が巧みに表現されている。作品を前にすると、まるで時間が遡り、遠い記憶の中に迷い込んだかのような気分になる。
江頭さんとの出会いは、2024年6月。商業施設の広告ビジュアル制作を通じて、彼の作品に触れる機 会が訪れた。その時から、私の中で彼の作品が放つ独特の魅力が一気に広がった。彼の作品は、ただ見るだけではなく、もっと深く、触れることができたらどんなに素晴らしいだろうと感じた。その思いが実を結び、2025年2月12日から、新たにオープンした弊社フリースペース「Space73TOKYO」での個展開催が決まった。

このフリースペースは、もともと 物撮影やオーディション撮影に使っていた場所だが、そこを個展やポップアップのためにリニューアルした。「色々な“モノ”や“コト”を発信していきたい」という思いから生まれたこの空間に、江頭さんの作品が加わることに、どこか特別な予感がした。
そして、江頭さんから提案されたのは、「昔ながらの街の写真館」をイメージした展示空間。そうして決まったテーマが、『寫眞館』だ。展示の形式も、ただ作品を鑑賞するのではなく、実際にその作品に触れ、衣装を身に纏い、江頭さんの世界観に包まれながら写真を撮るという、体感型の展示会へと変貌した。この提案が、予想以上に大きな反響を呼んだ。

会期中、来館されたすべての方が、作品に触れることの新鮮さに驚き、楽しんでくださった。中には、「江頭さんの作品を触るのは初めて!」、「江頭さんの世界に入り込めて、夢が叶った!」といった感想をいただいた。そんな一言一言が、江頭さんの作品がどれほど多くの人々の心に寄り添っているかを物語っていた。
その魅力の源は何だろうか。おそらく、それは花柄の毛布が持つ、あの独特の温もりと懐かしさ、さらには、モチーフとなる素体に宿る哀愁や儚さにあるのだろう。江頭さんは、そのすべてを巧みに包み込むように表現し、観る者の心を打つ。それは、ただのアートではなく、視覚と触覚を通して深い感情にアクセスさせる体験だ。

展示が終わった後、江頭さん自身も「毛布は触らないとダメですね」と語っていた。その言葉からも、作品の深さと、その体験がどれほど大切であるかが感じられる。触れ、感じ、そして写真に収めることで、江頭さんの世界に深く浸ることができる。この展示形式は、今後も続いていくに違いない。
次回、江頭さんの作品に触れる機会があれば、ぜひその温もりとエモーショナルな想いを肌で感じてほしい。花柄の毛布が語る、誰もが共鳴するような感情に、きっと心を動かされることだろう。

江頭 誠
Makoto Egashira
花柄の毛布を主な作品素材として、立体作品やインスタレーションを手掛ける。
主な展覧会に「六本木アートナイト2017」、「BIWAKOビエンナーレ2022」など。
アーティストYUKIの「My lovely ghost」のMVやGUCCIのショートフィルム「Kaguya by Gucci」、札幌PARCO「CUTEST me ever」にアートワークで参加。